内容
あなたは親の入れ歯を洗えますか?
購読している新聞の週刊誌の広告の1部が目に入ったのは夏ごろだった。
興味があったので買って読もうと思ったけど、いつの間にか買い忘れてしまった。
「あなたは親の入れ歯を洗えますか?」その言葉から内容をいろいろと想像していた。
木馬歯科は障がい者歯科相談医を標榜しているので、
脳こうそくなどで歩行できなくなった患者さんも大勢来院する。
場所がら広い駐車場がありエレベーターもあるので通院しやすいのだろう。
問題は床の下に配管があるので入口に段差がある。
しかしながらこれは取り外しのスロープを用意するだけで通院可能となる。
先日から通院しているPさんは脳こうそくの後遺症でしゃべることができない。
しかも半身麻痺で歯ブラシをするのも大変そうだ。
1週間に1度の割合で通院してもらい、入れ歯を製作している。
でも毎回、わたしが最初にやることはブラッシングだ。
その状態は家ではブラッシングをしていないだろうというほど汚れている。
治療方針は本人にはもちろん、付添いの奥さんにも説明する。
入れ歯とは取り外しのできるやり方である。
ところが奥さんの希望はなんとか固定性のブリッジにはならないか、というものだった。
残っている歯の状態からブリッジでの治療は不可能という答えに不満そうである。
なぜならば、「わたしは歯ブラシをしてあげることができない」
いや、そんなことはないはずなのだが、気持ち悪いというものらしい。
そうだ、付添いには息子さんもいるので、そちらに頼もう。
わたしが本人に対してブラッシングの仕方を見せた。
難しいことではない。
そして1週間後、がっかりした。
1週間の間、1度も歯ブラシをしたとは思えない状態なのだ。
そして最初の10分をわたしがブラッシングをすることに。
毎回わたしがブラッシングをしてから治療が始まる。
そこで、またあの週刊誌の見出しが気になった。
「あなたは親の入れ歯を洗えますか?」
どんな内容だったんだろう?あれから1か月も経過しているので、
本屋にもコンビニにも置いていない。
ネットで「親の入れ歯を洗えますか?」と検索したら、
週刊文春の8月31日号であることがわかった。
それでアマゾンで調べたら、注文ができた。
内容は、親の介護に関するものでした。
子供が親にできることできないことをはっきりさせることが必要だと。
その1例として「親の入れ歯を洗ってみる」こととある。
これができなければ排泄や入浴の手伝いはできないだろうとのこと。
心配になった、Pさんは入れ歯を洗ってもらえないとすれば、
他の生活面での補助はどの程度してもらっているのだろう?
近いうちに入れ歯は装着でき調整が終われば治療は終了となり
1週間に1度もわたしと会うこともなくなるだろう。
Pさんの今後の口の中の状態は悲惨だと予想できる。
いつものように時間をかけてわたしがブラッシングをする。
「ご主人には長生きしてもらいたいでしょ」
「歯ブラシをきちんとやらないと誤嚥性肺炎で命を落とすんですよ」
付添いの方につぶやいた。
家族は助け合うものではないのだろうか?
子供は親に小さいころ歯ブラシをしてもらい、
むし歯にならずにすんだのではないだろうか?
夫が身を削り一所懸命働いたお蔭で何不自由なく生活できたのではないだろうか?
家族がお互いを助け合うことこそが絆のはず。
週刊誌の見出しだけど
「看取り」絶対後悔しない親と子の覚悟とある。
後悔はしたくないものだ。
院長 高安 洋
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