少しだけいい話。患者さんがよくなっていくのを見ていくのはうれしいことなのです。当医院では、なるべく抜かないのをモットーにしているので患者さんに我慢を強いることもよくあります。

I川さんという、歯周病に悩んでいる方がいます。できる限り、考えられるだけの手をうっても時々歯肉を腫らしてきます。もちろん本人にもよくなりたいという気持ちが強いので、抜きません。ブラッシングにも熱心でよくならないわけがないとも考えるのです。

そこで、3年位前に読んだ本を思い出しました。タイトルが「乳酸菌で歯周病を治す」です。医者であり歯科医師でもある方が書いたものです。要約するとビオフェルミンやヨーグルトを歯ブラシに付けて歯肉をマッサージして、しかもその後飲み込んでしまうというものでした。しかしながら、ビオフェルミンを歯科医院として出すには医療法にどうなのか、ヨーグルトを投与するわけにもいかないので、患者さんに本を貸して自己責任で試してもらうことにしました。

本を貸して3週間くらいして来院してもらったところ、喜んでいました。歯肉が引き締まったというのです。実際に見てみると本当に引き締まっていました。どんな方法をとったかというと最初はビオフェルミンを試したそうです。読んだときは錠剤のビオフェルミンをミキサーで粉末状にするとあったのですが、現在は粉末状のものがあるそうです。しかしながら本来の目的は整腸なのでお腹がゴロゴロしてしょうがなかったそうです。そこで砂糖の入っていないヨーグルトによるブラッシングに換えたそうです。すると2週間ほどで結果がでたとの報告がありました。3ヵ月後にまた来院する約束をしていますので、また報告したいと思います。

歯周病で悩んでいる方は本をお貸ししますので自己責任で試してはどうでしょうか。何十人に試していい結果がでたら堂々と治療法の一つとして薦めていきたいです。

次にSさんです。この方は右の奥にブリッヂを装着してから頭痛、肩こり、腰痛がでてきたというもので、整形外科や接骨院などを経て当医院へ来院しました。かみ合わせをチェックするとブリッヂが噛んでいないのです。これほど噛み合わせが健康に左右するとは思いませんでした。原因は分かりましたがどうしようかと悩みました。まず作りかえることを了承してもらい今までのブリッヂを除去して高さを簡単に調整できる仮歯に替えました。さてどのくらいの高さにしたら健康を取り戻すことができるのか、試行錯誤が始まりました。

一つの目安として、前のブリッヂが入った状態で噛んでもらいOリングテストをするとOリングが開いてしまうのです。これはどういうことをしたかというと親指と人差し指で輪を作ってもらい、わたしが両手で作ったOリングで左右にひっぱるというものです。親指と人差し指での輪に一番力が入るのですが、この状態だと一番力が入る親指と人差し指の輪で引っ張って開かない高さに調整してみました。一度ではなかなかうまくいかないので1週間に1回、2ヶ月くらいで目的にかなう高さの仮歯が完成しました。最後は患者さんが一番力の入らない親指と小指の輪を、わたしは一番力が入る親指と人差し指の輪で引っ張っても、開かない状態まで調整しました。

健康の方はどうかというと、これは噛めるという状態にしただけでかなり元気になりました。理想の噛み合わせにしたところでは、頭痛、肩こり、腰痛を忘れていたと言っていただけました。しかしながら仮歯は簡単に調整ができていいのですがこれをずっと使うわけにもいかないので最終補綴物に替えないといけません。これがまたやっかいでした。仮歯をはずして型を取るわけですが短時間でかみ合わせに狂いがしょうじるのです。2度ほど作り直して、仮付けにして1ヶ月ほど様子をみてやっと完成しましたが苦労したし、勉強にもなりました。そういう教訓からかぶせ物は仮付けにして様子をみてから合着することもしばしばなのです。

歯は噛むためだけのものではないのです。体を支えるという目的もあるのです。前にも話しましたが、月に2回介護審査会に出席しています。ケアマネージャーによる問診表と主治医による意見書から介護度を判定する会です。どこをみても口腔状態を表すものはないのですが『入れ歯の洗浄は自分ではできない』などと書いてあると、この人は入れ歯を使っているのだなとわかります。口腔状態がわかるとよりよい指導ができるのではと思います。歯を失ってそのままにしておくと60%の人は寝たきりになるというデーターがあるのです。介護を受ける方がものすごく増えています。3年ごとに負担する保険料が上がる可能性が高いのです、また現在は負担する金額は1割ですが2割、3割になるかもしれません。